『神曲 修羅六道』あらすじ
【第一圏】素戔嗚尊の章 「志」
思いこがれていた女性ベアトリーチェを失い絶望に打ちひしがれたダンテは暗い森に迷い込む。※1
素戔嗚尊(すさのおのみこと)が助けに来て、神船(みふね)をさずけ、修羅道を越えて行けと命ずる。
(※1実は、ダンテはイタリアのフィレンツェで起きた政治的抗争において、市民代表である白派のリーダーの1人だったが、貴族や富裕層が支持する黒派の軍事クーデターによってフィレンツェを永久追放される。その後の流浪の絶望もあるのですが、作中は、その出来事が起こる前の時点として描いており、死後の世界で会う者が、フィレンツェで争いが起こることを予言として語るところもポイント)
ダンテは、自分はアエネーアスやパオロのような英雄や聖人ではないから、生きたまま死後の世界を旅することは可能かと不安に思う。
素戔嗚尊は、ためらうダンテに向かい、自分がダンテを助けに来たのはベアトリーチェに頼まれたからだと告げる。
ダンテは、ベアトリーチェが、自分の書いた詩(新生)によって鎮魂となり、心安らぎ、天からダンテを見守っていると知り、死後の世界を旅する勇気を得る。
素戔嗚尊は、日本初の和歌「八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を」と共に「己が守護する中心を探せさらば見出さん。己がなすべき中心を探せさらば見出さん」と語る。
それを聴きダンテは「チェルカトローヴァ」と口にする。
そこへ、巨大な三途の川の大蛇(おろち)が複数現れ、生きたままの渡ろうとするダンテに襲い掛かる。
素戔嗚尊が大蛇を退治しダンテを助ける。
ダンテは、死後の世界を旅しベアトリーチェに会うことと、その過程で見聴きしたことを書き記し、亡者供養とすることを志とする。